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 2002/11/02 神奈川県中津川田代付近



秋も深まった10月下旬のある日、私にK.OH さんからメールが届いた。
さんまの会を開催するので参加するように、という唐突な案内であった。
「マンション住まいの当方は、気兼ねなく煙を出しながら炭火の遠赤外線で焼いた、脂が滴るサンマを数十年来食したことがない。そこで野外でサンマの会を行いたい。 炭火焼のサンマを思う存分食すことを目的とする。サンマは一人に付き5匹用意する」と云う宣言文のような内容である。
開催日は休前日の11月2日と指定されていたが、肝心な場所・原材料の手配・段取りについては一切触れていなかった。
私は取りあえず賛同の意を伝え、サンマの数を2匹に減らすよう進言しておいた。
たとえ美味しい炭火焼の旬のサンマでも、一人2匹で充分である。残ってしまったら始末に困るし、捨てるようなことになってしまったら、サンマに申し訳ない。
「開催について皆の賛同を得た。サンマの数を減らすことについては了解した。一人4匹とする。ついては会の趣旨を理解のうえ、最適な場所を選定してもらいたい。 なお、サンマとダイコンの手配はA.K さんを指名するので新鮮なサンマの入手に万全を尽くすように伝えてもらいたい。万一手抜かりがあったなら厳罰に処す」とK.OH さんから1日置いて、再度メールが届いた。
どうやら、サンマの調達に手抜かりがありし場合には、私にも罰が待っているようである。
「お酒はどうするのか、酒なしで済ますというのか? 酒が入れば帰りは運転できないぞ、どうするのだ!」と私は反抗的に返信しておいた。
「酒類はS.N さんに頼んでおくように、また当日は車で泊まるつもりで出かけて来るように」との回答をその翌日、再再度得た。
「炭はどうするのだ? 宴会にサンマだけでは寂しくないか、この季節の夜は充分に冷え込むぞ、温かいオデンでも用意したらどうか!」私はじっと我慢して返信した。
「オデンも結構だが寄せ鍋なら尚よろしいので段取りよろしくお願いね、炭はS.K さんに頼んでおく」との回答がK.OH さんからさらにその翌日、再々再度届いた。
ついにはっきりと言うべき時がきた。
「いいかげんにしなさい!!焼き網・皿コップハシ・照明具・シートいす・翌日の朝食等々どうするのだ!晩秋のこの時期に車での仮泊は厳しいのでテントをシッカリ設営し寝袋を用意したらどうだ!きちんと計画表、役割分担表を作りなさい」と私は厳しくキーボードを打ち込み、送信した。
さすがのK.OH さんも少しは反省したのであろうか、その翌日は返事がなかった。そして、翌々日に届いたK.OH さんからのメールにはエクセルと呼ばれる表作成ソフトを利用した見事な計画書と役割分担が一体化された企画書が添付されていた。 おまけに表題にはマジカルアウトラインと呼ばれるシャレたワザまで応用し、私に見せつけるがごとき演出であった。
計画書の基本的骨格はなかなかシッカリとしたものであった。だが、食材や装備などの細部・担当者欄はほとんど空欄のままだった。
K.OH さんは嘗てカブスカート・ボーイスカートの野外活動で指導的立場を果たしてきたアウトドアーの大ベテランである。従ってこのような野外活動計画については彼が最も得意分野とするはずであった。だが、今回のズサンさは何としたことか。
実は、当時彼は仕事上で行き詰っていたことを後に知った。このサンマの会を、彼にとって大きな気分転換にしたかったのである。
そして、当時のK.OH さんの苦境を知る、彼の職場のアシスタント女史が、自分の上司が不得手とするパソコンを上司になり代わって操作し、企画書を作成したことが後に判明した。
つまり、K.OH さんは彼のアシスタント女史に勤務時間中に"サンマの会企画書"作成を命じたのである。その後、K.OH さんはこの職場を去ることになる。

さて、それぞれの役割担当者の活躍も記しておく。
今回の主役はサンマである。脇役はダイコンである。この最も重要な原料調達を一方的に押し付けられたA.K さんの本音は大不満であったに違いない。しかし青白色に輝いた見事な大振のサンマ15匹、ダイコン2本、大根おろし器、レモン2ケ、醤油、これらをA.K さんは仕事を放り出して調達してたうえ、わざわざクーラーも自前で購入してくれたのである。
そして、サンマの数は、きつく要求された一人4匹〜つまり合計20匹のところを、自身の判断で15匹に減らしたのである。勇気アル素晴らしい決断であった。A.K さんは充分すぎるほどその職責を果たして頂きました。

次に重要なものは、宴会になくてはならぬもの、お酒である。私個人的には主役のサンマ以上に重要である。酒類の調達係りに指名されたのはS.N さんであった。
彼は仲間の活動に於いて、酒類以外の品を嘗て調達したことがない。食材などは、何をどのくらい何処で購入するのかまるで見当が付かないのである。またキャンプ用品も何が必要かをまったく理解していない。自分用のハシとコップだけを何時も持参し、共用の用具等は持参したためしがない。 従って彼には酒類の調達を割り当てる以外に選択肢がないのである。
そのS.N さんから私に調達する酒の種類と量について相談があった。今回メンバーはいつもの5人、彼とて我々の酒の分量については充分把握しているはずである。だが、かように、彼は調達を苦手としている。
相談のうえ、残すのも不経済であるので、適量と思われる350mlカンビール12本・日本酒5合紙パック4本・ウィスキーボトル1本を用意することにした。日本酒5合紙パックは、そのままヤカンに入れて熱燗にしようとの算段である。
実はこの量では不足した。だが結果的に身の安全という観点から、この量での打ち止めが幸いした。

炭の調達係りはS.K さんが指名された。当日は土曜日であったが、彼は仕事の都合で職場から直行の背広姿で遅れての参加となる。その道すがらで調達可能な品は炭以外は困難であろう、との思いやりからである。
彼の到着を待って火起こしを開始したのでは遅いので、別途残っていた炭を用意した。
彼は途中で岩手の切り炭を無事に購入することができ、炭を惜しげもなく使用することができた。それにしても真っ暗になってから背広姿での参加はご苦労様でした。

私は寄せ鍋の食材から調理用具、皿まで全て一式を用意し、その他に寝袋・テントを用意した。テントは一張りで足りたので、私が持参したテントは結局使用しないで済んだ。

こうして主催者の役割が不明のまま、私が場所を選定し、企画書の細部を埋めて参加者に配信し、曲がりなりにも段取りが整った。


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